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ニュースリリース

令和3年10月

ゲンノショウコエキスのグランザイムB阻害による
I型コラーゲン保護作用を発見

 佐藤製薬株式会社(本社:東京都港区、社長:佐藤誠一)は、皮膚機能と生薬についての研究を進め、ゲンノショウコエキス*1に、紫外線によるシワ形成に関わるグランザイムB*2を阻害する作用を新たに見出しました。
 なお、本研究成果は、2021年9月4日~9月5日にオンライン開催された第38回和漢医薬学会学術大会にて優秀発表賞を受賞しました。

1.研究の背景及び成果

 皮膚の真皮組織において、I型コラーゲンは皮膚のハリや弾力の形成に重要な役割を果たしており、光老化*3に伴うI型コラーゲンの減少はシワ形成の主要な要因として報告されています。I型コラーゲンは、デコリン*4に保護されMMP-1*5による分解から守られていますが、紫外線によりグランザイムBが発現誘導されると、グランザイムBがデコリンを分解しMMP-1によるI型コラーゲンの分解が促進することが知られています(図1)。グランザイムBの活性を阻害することでデコリンの分解を抑制し、Ⅰ型コラーゲンを分解から保護することは、シワ形成の改善、ハリや弾力の維持に効果があることが期待されます。


図1:紫外線によるⅠ型コラーゲン分解のイメージ

図1:紫外線によるⅠ型コラーゲン分解のイメージ


 本研究では、約300種の植物エキスをスクリーニングし、強いグランザイムB 阻害活性を有するゲンノショウコエキスを見出しました。ゲンノショウコはフウロソウ科の植物で、ゲンノショウコ(現の証拠)の名前の通り服用することで確かな効き目があることが古くから知られている和漢薬の一種です。スクリーニングにより選定されたゲンノショウコエキスは、紫外線により発現誘導されたグランザイムBを阻害することでデコリンの分解を抑制し、MMP-1によるⅠ型コラーゲンの分解から保護することを示しました(図2)。今回新たに見出したゲンノショウコのグランザイムB阻害作用を応用することで、紫外線によるシワ形成の改善に働きかけることが期待されます。

 本研究成果については今後、新たに開発するスキンケア製品に活用していく予定です。


図2:ゲンノショウコエキスのⅠ型コラーゲン保護作用

図2:ゲンノショウコエキスのⅠ型コラーゲン保護作用


*1 ゲンノショウコ:和漢薬の一種でフウロソウ科の多年草(学名Geranium thunbergii)。「現の証拠」が和名の由来とされており、伝承的に胃腸薬として使用されてきた。第十八改正日本薬局方収載の生薬として整腸作用等を有する。

*2 グランザイムB:紫外線などによって表皮で発現誘導され、デコリンなどの細胞外マトリックスを分解し、炎症などに関与するセリンプロテアーゼ。

*3 光老化:日光を長期間にわたり浴び続けることによって真皮のコラーゲンなどが減少し、肌のシミ、しわ、たるみが生じる現象。光の中でも、紫外線が主な原因といわれ、皮膚がんの発症にも関わる。

*4 デコリン:Ⅰ型コラーゲンに結合し、真皮結合組織の構成成分としてはたらく細胞外マトリックスタンパク質。

*5 MMP-1:マトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinase、MMP)ファミリーの一種。MMP-1は、分泌型の間質コラゲナーゼとも言われ、真皮のⅠ型コラーゲンを分解する。

ゲンノショウコエキスによるデコリン分解抑制作用

方法 デコリンにグランザイムB とゲンノショウコエキスを反応させ、電気泳動でタンパク質を分離後、デコリン断片を銀染色で検出した。
結果

図3

図3:ゲンノショウコエキスによるデコリン分解抑制作用

ゲンノショウコエキスがグランザイムBの活性を阻害することでデコリンの分解が抑制された。

ゲンノショウコエキスによるⅠ型コラーゲン分解抑制作用

方法 Ⅰ型コラーゲン溶液にデコリンを処置し再構築した後、ゲンノショウコエキスを添加し グランザイムBを反応させた。次に、MMP-1 を反応させ、電気泳動でタンパク質を分離後、Ⅰ型コラーゲン断片をクマシーブリリアントブルー染色で検出した。
結果

図4

図4:ゲンノショウコエキスによるⅠ型コラーゲン分解抑制作用

ゲンノショウコエキスがグランザイムBの活性を阻害することでデコリンの分解が抑制され、MMP-1 によるⅠ型コラーゲン分解が抑制された。

グランザイムB高発現表皮細胞によるデコリン、Ⅰ型コラーゲン分解とゲンノショウコエキスによる分解抑制作用

方法

通常の表皮細胞またはグランザイムB遺伝子を導入したグランザイムB高発現表皮細胞を上層のトランスウェルに、線維芽細胞を下層の培養プレートに其々播種し、ゲンノショウコエキスを添加し共培養した後、線維芽細胞のデコリン、Ⅰ型コラーゲンをウェスタンブロッティング、免疫染色にて検出した。

図_トランスウェル共培養試験

結果

図5:ゲンノショウコエキスによるデコリン、Ⅰ型コラーゲン分解抑制作用(グランザイムB高発現表皮細胞)

図5:ゲンノショウコエキスによるデコリン、Ⅰ型コラーゲン分解抑制作用
(グランザイムB高発現表皮細胞)

線維芽細胞のデコリン、Ⅰ型コラーゲンはグランザイムB高発現表皮細胞との共培養により減少し、その減少はゲンノショウコエキス 18 µg/mL以上で抑制され(左上図)、統計学的にも有意な作用が認められた(右図)。
また、免疫染色においても、ゲンノショウコエキス 18 µg/mLによるⅠ型コラーゲンの分解抑制作用が確認された(左下図)。

紫外線照射によるデコリン、Ⅰ型コラーゲン分解とゲンノショウコエキスによる分解抑制作用

方法

ヒト三次元培養表皮モデルに紫外線(UV-B)照射し、エキスを添加して線維芽細胞と共培養した後、線維芽細胞のデコリン、Ⅰ型コラーゲンを免疫染色法にて検出した。

図_トランスウェル共培養試験_紫外線照射刺激

結果

図6:ゲンノショウコエキスによるデコリン、Ⅰ型コラーゲン分解抑制作用(紫外線照射)

図6:ゲンノショウコエキスによるデコリン、Ⅰ型コラーゲン分解抑制作用
(紫外線照射)

ヒト三次元培養表皮モデルへの紫外線照射により、線維芽細胞のデコリン(上図)、Ⅰ型コラーゲン(下図)は減少し、その減少はゲンノショウコエキス18 µg/mLの添加により抑制された。


図7:ゲンノショウコエキスのⅠ型コラーゲン保護作用

図7:ゲンノショウコエキスのⅠ型コラーゲン保護作用

以上の結果から、ゲンノショウコエキスは、紫外線によって誘導されるグランザイムBを阻害することでデコリンの分解を抑制し、MMP-1による分解からⅠ型コラーゲンを保護することが示唆された。


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