ニュースリリース
2025年5月
エラスチン線維の紫外線ダメージ改善に繋がる新知見
米国研究皮膚科学会で報告
佐藤製薬株式会社(本社:東京都港区、社長:佐藤誠一)は、皮膚のハリや弾力を保つはたらきがあるエラスチン*1の線維が長期に渡る紫外線ダメージによって弾力機能が損なわれる根本的な原因に着目して研究を進め、エラスチン線維の紫外線ダメージ軽減に繋がる新知見について、2025年5月7~10日に米国(カリフォルニア・サンディエゴ)で開催された研究皮膚科学会「Society for Investigative Dermatology Meeting(SID2025)」にて発表しました。
研究の背景及び成果
エラスチン線維は、紫外線によって分解され減少することが知られています。一方で、紫外線曝露の影響を長期に受けた光老化*2状態の皮膚では、「分解による減少」だけでなく「新たな線維の形成不全」が関連すると考えられますが、後者の詳細なメカニズムは明らかにされていませんでした。
本研究では、エラスチン線維の形成に必須な細胞外マトリックスタンパク質であるファイブリン5*3に着目しました。先行研究においてファイブリン5が紫外線などによって増加する酵素であるグランザイムB*4の新規基質になり、ファイブリン5はグランザイムBに切断されることによりエラスチン線維形成能力を失うことを明らかにしました。本研究ではさらに、グランザイムBによるファイブリン5の切断が紫外線照射によるエラスチンの線維形成不全の原因になることを示し、グランザイムBを抑制することでこれらの紫外線照射によるエラスチン線維への悪影響が軽減されることを明らかにしました。
今回の知見を活かし、紫外線ダメージによる肌弾力低下を改善する皮膚科学研究を進めてまいります。
図1:グランザイムB阻害によるエラスチン線維の紫外線ダメージ軽減作用のイメージ
※1エラスチン: 皮膚の真皮組織の約2~5%を構成する弾力線維。ゴムのように伸び縮みする性質があり、皮膚のハリや弾力の形成に重要な役割を果たす。
※2光老化: 紫外線ダメージが肌に蓄積することによる皮膚の老化現象。皮膚老化の原因の80%を占め、深いシワやたるみなどの肌悩みを引き起こす。
※3ファイブリン5: ファイブリンファミリーの一種。細胞接着・遊走やエラスチンの線維形成に関わり、エラスチン線維の構成物質としてもはたらく細胞外マトリックス。ファイブリン5の遺伝子変異は皮膚のたるみを特徴とする皮膚弛緩症の発症の原因になる。
※4グランザイムB: 加齢、紫外線曝露や炎症時に増加し、様々な細胞外マトリックスを分解するタンパク質分解酵素の一種。
紫外線照射によるエラスチン線維形成不全とグランザイムB阻害によるレスキュー作用
方法 |
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結果 |
紫外線の照射により、ファイブリン5は減少しエラスチンの線維形成は抑制された(図3中央)。また、紫外線照射によるファイブリン5の減少及びエラスチン線維形成不全は、グランザイムBの阻害剤によってレスキューされた(図3右)。 このことから、グランザイムBを阻害することで、紫外線照射によるエラスチン線維形成不全が改善されることが示唆された。 |