ニュースリリース
2025年6月
慶應義塾大学との共同研究での筋肉の萎縮に対する
スペルミジンの有効性を示した研究成果を発表
佐藤製薬株式会社(本社:東京都港区、社長:佐藤誠一)は、慶應義塾大学医学部整形外科学教室(中村雅也教授)とサルコペニア(加齢によって筋肉量と筋力が低下し、身体機能が低下している状態)に関する共同研究を進め、このたび、体内に存在する天然成分「スペルミジン」の筋肉内投与が筋肉の萎縮の進行を抑え、また、筋肉の再生を促進することを明らかにしました。本研究成果は2025年6月13~15日に開催された「第25回抗加齢医学会総会」において発表しました。
研究の背景及び成果
筋肉は高い適応力を持っており、栄養や運動による負荷で太く強くなりますが、加齢や長期の安静、糖尿病など病的な状態では、筋肉が細く弱くなる「筋萎縮」が起こります。スペルミジンは、細胞の成長や修復に関わる「ポリアミン」と呼ばれる物質の一種で、老化を抑える働きも注目されています。本研究では、スペルミジンが筋肉の萎縮や再生に及ぼす影響を、検討しました。
本研究では、筋萎縮のモデルにスペルミジンを様々な投与経路で投与し、筋肉の重さや太さ、遺伝子やタンパク質の変化を調べました。その結果、筋肉内への投与が最も効果的に、筋重量低下の改善や筋萎縮に関わる遺伝子の働きを抑えることが明らかになりました。また、筋再生のモデルでは、スペルミジンの筋肉内投与により、再生した筋線維の太さが顕著に増大しており、スペルミジンの筋肉内投与が筋再生を促す効果も確認されました。これらの成果をもとに、スペルミジンの筋肉内投与が他の投与方法よりも優れた効果を発揮することに着目し、「スペルミジンの筋肉内投与による骨格筋増強剤」の特許出願も行いました(特願2024-509154)。
本研究で得られた成果は、今後、サルコペニアが関わる疾患の治療に役立てられる可能性があり、実用化に向けた検討を進めてまいります。
スペルミジン筋肉内投与の筋萎縮抑制作用
方法 | 後肢固定による廃用性筋萎縮モデル動物では、後肢固定7日目に筋重量の低下および筋線維面積の縮小が観察される。後肢固定期間中の7日間、スペルミジンを1日1回筋肉内投与し、7日目の筋重量および筋線維面積を対照群と比較した。また、固定3日目の筋サンプルを用いて、リアルタイムPCR法による筋萎縮関連遺伝子MuRF-1の発現変動についても評価した。 |
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結果 |
廃用性筋萎縮モデルにおいて、スペルミジン筋肉内投与は筋重量低下を改善し、また、筋線維面積を増大させた(図1) 廃用性筋萎縮モデルでは筋萎縮関連遺伝子であるMuRF-1の遺伝子発現上昇が認められ、スペルミジンの筋肉内投与はMuRF-1の遺伝子発現を抑制した(図2) これらのことから、スペルミジンの筋肉内投与は筋萎縮を抑制することが示唆された |